借金返済にはシミュレーションが大事とよく聞きますが、いまいちそのやり方が分からないという人も多いのではないでしょうか。
返済計画に大事なことを順序を追ってみてみましょう。
借金返済のシミュレーションを行う
シミュレーションとは模擬するということです。
借金返済では、借入前または返済の途中で、無理なくかつ効率よく返済できる返済計画を立てるために、返済シミュレーションを行うことが大事です。
計算機やエクセルを使って自分で計算してみるのも良いですが、金融機関の公式サイト内にある返済シミュレーションサービスを使うと便利です。
また、金融機関の公式サイトで返済シミュレーションのサービスを提供していない場合は、金融機関の店舗に出向く手間はかかりますが、店頭窓口でも無料で返済シミュレーションを作成して貰えることが多いです。
公式サイト内の借金返済シミュレーションの利用
これぐらいの期間で完済したいという目安があるなら、返済シミュレーションに借入元金、貸付金利、返済期間を入力して計算します。
すると、月々支払わなくてはいけない返済額が算出されます。
月々これぐらいの支払いをしていきたいという金額が決まっているなら、返済シミュレーションに借入元金、金利、月々の返済額を入力してみましょう。
すると、完済するまでの返済期間が算出されます。
計算機を使った返済計画を立てるための計算式
借金返済シミュレーションを使ったけど、本当に計算結果があっているか心配という方は、計算機を使って自分自身でも返済計画の計算ができる様にしておくと良いです。
利息額の算出
金銭の貸付代金である利息額の計算式は、次の様になります。
たとえば、借入額10万円、貸付金利15.0%、借入日数30日の場合に発生する利息額は、次の様になります。
小数点以下は切り捨てるので、利息額は1232円となります。
借金元本の充当額の算出
毎月1回、借金返済を行いますが、その返済額は利息額を差し引いた分が借金元本の返済に充てられます。
借金元本の充当額の計算式は、次の様になります。
返済後の借金残高の算出
返済を行った後の借金残高の計算式は、次の通りです。
計算機を使った計算はかなり面倒です。
そのため、金融機関の公式サイトで公開されている返済シミュレーションを優先的に使って、計算結果が怪しいと感じた部分があったなら、その部分を精査する為に自分でも計算機を使って計算をしてみると良いでしょう。
返済シミュレーションで毎月の返済額を計算
金融機関の公式サイトで公開されている返済シミュレーションを使うことで、簡単に毎月の返済額を算出することができます。
例えば借入額10万円、貸付金利15.0%、半年で完済をしたい場合、返済シミュレーションを使うと毎月の返済額は次の様になります。
返済シミュレーションの結果(毎月の返済額)
返済回数 | 返済前借金残高 | 借金元本の充当額 | 利息額 | 返済後借金残高 |
---|---|---|---|---|
1回目 | 100,000 | 16,154 | 1,250 | 83,846 |
2回目 | 83,846 | 16,356 | 1,048 | 67,490 |
3回目 | 67,490 | 16,561 | 843 | 50,929 |
4回目 | 50,929 | 16,768 | 636 | 34,161 |
5回目 | 34,161 | 16,977 | 427 | 17,184 |
6回目 | 17,184 | 17,184 | 214 | 0 |
(単位は全て円)
返済シミュレーションを使った結果、毎月の返済額は17,404円になりました。
また、返済の合計額は104,418円となり、利息の合計額は4,418円となりました。
返済シミュレーションで返済期間を計算
毎月の返済額に対する完済までの期間を知りたい場合、返済シミュレーションを使うことで、簡単に完済までの返済期間を算出することができます。
例えば、借入額10万円、貸付金利15.0%で、毎月の返済額を1万円・2万円・3万円とした場合の返済期間を返済シミュレーションで算出すると次の様になります。
返済シミュレーションの結果(返済期間)
毎月の返済額 | 完済までの返済期間 |
---|---|
1万円 | 11カ月 |
2万円 | 6カ月 |
3万円 | 4カ月 |
返済シミュレーションを使えば、簡単に返済計画を立てれることがお分かり頂けると思います。
返済計画の立て方
無理なく返済できる金額、かつ完済までの期間は長引かせないこと
月々の支払いに余裕を持たせたいからといって、返済期間が長くなりすぎるのも考えものです。
完済までの期間が長引くほど、支払わなくてはいけない利息が増えてしまいます。
利息は借入残高×貸付金利×借入日数/365で計算されるので、借入日数を長くすると利息額が増えます。
つまり、返済期間を長くすると、返済総額が多くなってしまうという事です。
返済総額を少なくするには、返済期間を短くする必要があります。
返済期間を短くするには月々の支払額を増やせばいいのですが、月々の支払額を極端に増やし過ぎると生活が苦しくなり返済計画の破綻に繋がります。
無理のある返済額で返済計画を立てて実行しても、結局は払えなくなり返済計画のやり直しを余儀なくされます。
月々の返済負担と返済総額とは、トレードオフの関係があり、どちらか一方を良くするともう一方は悪くなるという関係があります。
途中で計画崩れになってしまわないためにも、前もって十分に返済シミュレーションを行うことが大事なのです。
理想的な返済計画は、月々無理なく返済でき、かつ返済期間をできるだけ短くした計画です。
そうすれば、生活にあまり負担をかけることなく、借金の返済総額を少なくすることができます。
一般的な返済計画の立て方
返済計画の立て方の流れは、一般的には次の様になります。
月々どれだけ借金返済をして、どれだけの期間払い続けるかをシミュレーションするには、自分の家計状況を把握しなくてはいけません。
現在の収入と支出の状況なら、いったいどれくらい借金返済に回すことができるのかを家計簿などで確認してみましょう。
借金返済の金額は出来るだけ多い方がいいのですが、突発的にお金がかかってしまう医療費や冠婚葬祭費用も想定して、余裕のある返済額にしておかなくてはなりません。
繰り上げ返済の利用
繰り上げ返済とは、ボーナスなどのまとまった収入があった時に、毎月の返済とは別に自分の意志でまとめ払いを行うことです。
繰り上げ返済を行うと借金残高を大きく減らすことができるので、返済期間を短縮でき、利息の総支払額を少なくすることができます。
まとめ払いの支払いは、借入先の金融機関が指定している銀行口座への振り込み、借入先の金融機関の店舗に設置している専用端末、コンビニに設置されているATMなどでできます。
夏と冬にボーナスが必ずでる方で、ボーナス支給額の予測がつく方は、返済計画を立てる時にボーナスで繰り上げ返済をする事を想定して、返済計画を練ると良いです。
返済シミュレーションを使って返済計画を立てる際のポイント
ここでは、借金返済シミュレーションを使って返済の計画を立てる際のポイントについて説明をしています。
完済までの期間が長すぎる場合
例えば、クレジットカードを利用していて、その支払い方法をリボ払いにしていたとします。
リボ払いは、毎月低額の返済額なので、月々の返済のほとんどが利息分の支払いとなり、借入元本はあまり減りません。
つまり、リボ払いだとなかなか借金が減らず、完済までの期間が長くなり、返済総額が大きくなります。
クレジットカードの発行会社がリボ払いを用意しているのは、利用者の返済総額を増やすことでクレジットカードの発行会社の利益が増えるからです。
リボ払いの様に毎月の返済額が少額となっている場合は、返済シミュレーションを使って生活に無理のない範囲で、毎月の返済額を増やす様にしましょう。
毎月の返済額を増やすことで早期完済ができ、返済総額を減らすことができます。
返済総額が多いと感じる場合
借金の返済計画を立てるために返済シミュレーションを行った結果、返済総額が多いと感じた場合は、返済期間を短くすることに努めましょう。
すでに述べましたが、返済期間を短くすれば、返済総額を減らすことができます。
返済期間を短くするためには、日々の生活が苦しくならない範囲で、月々の返済額を増やす必要があります。
月々の返済で生活が苦しい場合
借金返済を行っているが、その返済に苦慮している方は、返済シミュレーションを使って返済計画を立てる前に、家計の収支の見直しをしましょう。
家計の収支を見直してみると、生活費の出費にかなりムダがあることが浮き彫りになることがあります。
このままでは返済が大変だと思うなら、支出の中でムダを削れるものがないかを調べてみましょう。
支出を減らすことができれば、その分を借金の返済に回していきます。
借金前に返済計画を立てることはとても大事ですが、借金をした後でも家計を見直してから返済シミュレーションを実施して返済計画を立て直すことは大切です。
家計の支出項目には、次の様な項目があるので、各項目について節約ができなかをしっかりと検討してみましょう。
家計の支出項目
- 食費
- 家賃
- 自動車維持費
- 水道光熱費
- 日用品費
- 通信費
- 被服費
- 教育費
- 医療費
- 交際費
- 遊興費
- 生命保険料
- 雑費
教育費と医療費は、節約すべき項目ではありませんが、その他の項目は工夫次第でかなり出費を抑えることができるはずです。
現在、借金を返済中でその借金をスムーズかつ効率よく返したいなら、節約して支出の無駄を無くす必要があります。
節約して浮いたお金を借金の返済に回す返済シミュレーションを行って、返済計画を再構築してみましょう。
返済計画を立てる上での注意点
ここでは、返済計画を立てる際に注意すべき点について解説をしています。
貸付金利は実質年率で計算する
実質年率とは、貸付金利による利息額に、手数料その他の諸費用を含めた実質的な年利の事です。
金融機関から借り入れをした場合には、手数料や保証料などの諸費用が発生する場合があるので、利息金+諸費用をトータルの貸付利息とみなして、実質年率を使って返済計画を立てる必要があります。
貸付金利が変動金利の場合
貸付金利が固定の場合は、返済シミュレーションを行うのは容易です。
しかし、貸付金利が変動金利の場合は、世の中の景気動向によって貸付金利は変化をするので、完済までの返済シミュレーションを行うのは容易ではありません。
貸付金利が変動金利の場合は、金利変動を予測して返済計画を立てることができます。
ですが、今後の景気がどうなるかは予測できない場合があるので、金利変動を予測した返済計画を立てても、ほとんどは予測が外れてしまい、返済計画の再構築が必要となります。
そうであるなら金利変動は予測せずに、貸付金利の金利が変動した時に毎回、返済シミュレーションを使って、完済までの返済計画を作るようにした方が良いです。
貸付金利が変動するたびに、返済計画を立て直すのは手間がかかりますが、返済シミュレーションを使って自動算出すれば、さほど時間を掛けることなく返済計画の立て直しができます。
返済シミュレーションの結果、返済が困難な場合
ここでは、返済シミュレーションを使って返済計画を練ったが、収入に対してあまりにも借金の額が多すぎて、返済は困難といった場合の対応策について考えたいと思います。
返済が困難な状況となっているのなら、借入先の金融機関から督促や取り立てを受けているかもしれません。
督促や取り立てを受けていると、そのプレッシャーによって、冷静な判断が難しくなりますが、落ち着いて対応策を考えることが重要です。
借入先の金融機関に相談
まず、返済が厳しいのなら、優先して行うべきことは、借入先の金融機関に相談をすることです。
融資を行っているほとんどの金融機関では、借金返済に関する相談窓口を設けています。
借入先の債権者に、現在の自分の金銭状況や返済の目途などを説明することで、今後の利息の減免などの返済負担を軽くする措置を採ってもらうことができる場合があります。
弁護士などに債務整理を依頼
借入先に相談をしても、一般的には借入元本の減額まではしてくれません。
多重債務などで多額の借金を抱えており、その借金を大きく減らしたいという場合には、債務整理を考えた方が良いです。
債務整理とは、弁護士や司法書士といった法律の専門家に借金問題の解決を依頼して、借金の整理を行うことです。
債務整理には、自己破産を含めて様々な方法があり、債務者の借金状況、財産や家計の収支、家族構成などを考慮した上で、どの債務整理方法を実施するのかを決めます。
債務整理の方法には、過払金返還請求と任意整理、自己破産、特定調停、個人再生があります。
それぞれの債務整理方法のメリットとデメリットは次の通りです。
債務整理方法 | メリット | デメリット |
---|---|---|
過払金返還請求 |
法定金利を超えたグレーゾーン金利で債権者へ支払いをしていた場合に、払い過ぎた利息金を債権者から回収する手続きで、債務者にお金が返ってきます。 |
過払い金の返還請求には、10年間という時効があるので、10年より以前に払い過ぎたお金は取り返すことができません。 また、任意交渉なので、債権者が返還を拒否した場合には、裁判所に返還請求訴訟を提起する必要があります。 |
任意整理 |
債権者と直接、交渉を行うことで、今後の利息カットや遅延損害金のカットなどを期待できます。 裁判所を使わないので、費用がリーズナブルで、手続きにあまり時間がかかりません。 |
任意交渉なので、債権者と合意に至らないことがあります。 |
自己破産 |
裁判所に破産申し立てをすることで、原則、借金をゼロにできます。 |
債務者の財産は処分をすることになるので、家や土地などの不動産がある場合は失ってしまいます。 また、自己破産手続き中は、職業制限があり所定の職業に就くことができません。 |
特定調停 |
裁判所が選出した調停委員が金銭の借主である債務者と貸主である債権者の仲裁役を務めます。 借金返済の負担軽減内容は、任意整理と同じで、今後の利息や遅延損害金の免除です。 |
和解が成立した場合には、調書が作成されます。 調書は、裁判の確定判決と同等の法的な強制力があるので、もし返済が滞った場合には、裁判手続きなしで財産の差押えが行われる可能性があります。 |
個人再生 |
住宅資金特別条項の適用を受けることで持ち家を失うことなく、住宅ローンを除いた借金を最大1/5にまで大幅に減らすことができます。 大幅に圧縮した借金を返済計画に従って、3年間で分割弁済します。 |
個人再生を利用するには「将来的に安定した収入があること」、「住宅ローン以外の借金が5千万円以下であること」が必要です。 そのため、無職の方や、住宅ローンを除いた借金が5千万円を超える様な多額の借金がある方は、個人再生を利用することができません。 |
一般的に、債務整理を行うと金融機関が利用している個人信用情報機関に金融事故情報が記録されます。
この金融事故情報は、債務整理をしてから5年から10年経てば、自動的に抹消されます。
金融事故情報が記録されている期間は、金融機関のブラックリストに載っている状態なので、原則、どの金融機関からもお金を借りることができなくなります。
信販会社が提供しているクレジットカードのサービス、そして銀行が提供しているマイカーローンやマイホームローンのサービスも利用することができません。
借金をしたにもかかわらず、きちんとお金を返さなかったわけですから、債務整理の後しばらくの間は、金融機関から信用されなくなるという事です。
債務整理は少なからずデメリットもあります。
そのため、債務整理は、返済シミュレーションを行った結果、「返済の継続が困難でどうしようもない」といった時の最後の手段と考える様にしましょう。