借金苦で精神的に追い詰められてどうにもならなくなっている人を救済する為にあるのが自己破産です。
自己破産の特徴やメリット・デメリットについて見ていきましょう。
自己破産の特徴
自己破産を簡単にいうと、裁判所を通して手続きをして、全ての借金を無くすことです。
消費者金融や銀行の借入はもちろん、現在支払い中のローンもすべて支払い義務から逃れられます。
その代わり資産価値の高いものは全て没収となります。
また、一部の借入先だけを選んで債務整理をすることができないので、すべての借金が自己破産の対象となります。
自己破産の申立て場所は、申立人の居住地を管轄する地方裁判所になります。
自己破産の利用条件
自己破産の利用条件は、次の2項目を満たしている事です。
- 借金返済の目途が立たない支払不能、あるいは債務超過になっていること
- 過去7年以内に自己破産の免責や個人再生による借金減額を受けていないこと
上記の「個人再生による借金減額」とは、より具体的に説明をすると「給与所得者再生による借金の減額」と「ハードシップ免責」の事です。
給与所得者再生とは、会社員などの給与所得者が利用できる個人再生による債務整理の方法です。
また、ハードシップ免責とは個人再生後の返済中に返済困難な状況となった場合でも、借金総額の3/4以上を支払っていれば残りの返済は免除するという制度の事です。
つまり、過去7年以内に自己破産や個人再生(給与所得者再生・ハードシップ免責)によって借金の減免を行っている場合は、再び借金問題を解決する救済措置として自己破産を利用することはできないという事です。
但し、過去7年以内に自己破産や個人再生を行っていた場合でも、裁判官の判断によって事情を考慮した上で、自己破産が認められる裁量免責が行われることもあります。
自己破産方法の種類
実は、自己破産の方法には「同時廃止」と「管財事件」の2種類があります。
自己破産の申立てをした場合に、「同時廃止」と「管財事件」のどちらの方法が選ばれるかは申立てを行った裁判所で判断されます。
一般的に、同時廃止は自己破産の申立人にほどんど財産が無い場合に行われます。
一方、管財事件は自己破産の申立人に財産があって、財産を換金して各債権者に配当する必要がある場合に行われます。
ここでは、「同時廃止」と「管財事件」についてより詳しく説明をします。
同時廃止
同時廃止は、債務者に「33万円以上の現金」や「20万円以上の価値のある物品や資産」が無い場合に行われる自己破産手続きです。
同時廃止の場合に掛かる手続き期間は、およそ3~4カ月程度です。
管財事件
通常は、次に掲げる内容のいずれかに該当すれば管財事件として手続きが行われます。
- 債権者に配当可能な高額財産(33万円以上の現金や20万円以上の価値のある物品・資産)がある。
- 免責不許可事由に該当する可能性がある。
- 申立人が自営業者や個人事業者である。
免責不許可事由とは、破産法252条1項各号で規定されている自己破産による借金の免除を認めない借金理由の事です。
自己破産の申立人の借金理由が、この免責不許可事由に該当する可能性がある場合は管財事件として扱われます。
また、申立人が自営業者や個人事業者の場合も、債務や財産が複雑になることが多いため管財事件として自己破産手続きが行われます。
管財事件では、自己破産の申立人の財産や免責不許可事由の調査をする必要があるため、裁判所で破産管財人が選任されます。
管財事件の場合に裁判所に納める予納金は、破産管財人の人件費なども発生するため同時廃止と比較すると高額になります。
また、管財事件の場合に掛かる手続き期間は、申立人の財産管理をするという工数が増えるので、自己破産の申立てから3カ月~1年程度となります。
自己破産のメリット
自己破産は、経済的に破綻した場合に用いられる債務整理方法として、世間一般での知名度は高いです。
では、具体的には、自己破産をすることでどの様な利益を得ることができるのでしょうか?
ここでは、自己破産をすることで獲得できるメリットについて解説をしています。
自己破産を行うことで得られるメリットには、次の内容があります。
- 原則として、全ての借金を帳消しにできる。
- 定期収入・安定収入のない無職の方でも利用できる。
- 家族名義の財産は影響を受けないので失わない。
- 債権者は強制執行ができなくなる。
上記のそれぞれの内容について、補足説明をしていきます。
原則として、全ての借金を帳消しにできる
自己破産の最大のメリットは何といっても、全ての借金をゼロにできる点が大きいです。
自己破産は他の債務整理方法とは異なり、今後の返済計画を立てる必要はなく、一旦借金をリセットして1からやり直すことができます。
ただし、後ほど詳しく説明をしますが、自己破産で全ての借金をゼロにできるというのは原則であって、一部の借金は例外となります。
例外に該当する借金の場合は、自己破産を行ってもその借金は免除されません。
定期収入・安定収入のない無職の方でも利用できる
自己破産は、借金の免責が認められれば、手続き完了後に債権者に借金返済をせずに済みます。
このため、リストラや病気で職を失ってしまい定期収入が無くなってしまった人でも、自己破産手続きを行うことができます。
家族名義の財産は影響を受けないので失わない
自己破産をすると申立人に財産があれば、一部の財産を除いて没収されることになります。
ですが、没収をされるのは自己破産の申立てをした本人だけで、たとえ同居している家族がいたとしても、家族名義の財産は没収されることはありません。
ですから、家族などに迷惑を掛けることなく自己破産を行うことができます。
但し、申立人が作った借金の保証人に家族の方がなっている場合は、話は別です。
保証人に家族の方がなっている場合は、自己破産を行うと債権者から家族の方に返済の請求が行われることになります。
債権者は強制執行ができなくなる
借金返済の約束の期日を過ぎても、そのまま延滞を続けていると、最終的には債権者は裁判所に支払督促や貸金返還請求訴訟を提起することによって、債務者の財産の差押えを行います。
差押えの強制執行が行われると、給料や預金などが強制的に回収されて、家や土地などは競売に掛けられることになります。
ですが、管財事件の場合は、自己破産手続きを行うと、差押えの強制執行が行われていても失効して、強制執行ができなくなります。
また、同時廃止の場合は、自己破産手続きを行うと差し押さえの強制執行を中止することができ、免責が確定した時点で強制執行は失効することになります。
例えば給料の差押えが行われていた場合、同時廃止だと自己破産をしても差し押さえ自体は中止できますが、差し押え分の金銭は供託所もしくは勤務先の会社に留保されることになります。
その後、免責が確定した後に、自己破産の申立人は留保されていた給料を全額受け取ることができます。
つまり、同時廃止の場合は、自己破産をしたとしてもすぐに給料の全額を受け取れるのではなく、免責が確定するまでの間は差押えを受けていた時の給料(一般的には手取りの3/4)と同じ額の給料しか受け取れないので注意が必要です。
自己破産のデメリット
自己破産は、たとえ数億円という巨額な借金を抱えていたとしても借金をゼロにできるという、とても強力なメリットがあります。
ですがその一方で、自己破産はデメリットも多いという特徴があります。
ここでは、自己破産をする前に十分に検討しておかなければならない、自己破産のデメリットについて解説をしています。
自己破産のデメリットには、次の内容があります。
- 生活必需品以外の価値ある財産は没収される。
- 10年間ほど、金融機関から借り入れができない。
- 返済が免除されない借金がある。
- 借金の理由によっては、借金が免除されない。
- 保証人(連帯保証人)が取立てを受ける。
- 破産手続き中に就けない職業がある。
- 官報に住所・指名が掲載される。
- 免責が不許可となった場合は破産者名簿に記載される。
- 事業経営者の場合は、信用を失い今後の取引に悪影響がでる。
- (管財事件の場合)破産手続き中は引越しができない。
- (管財事件の場合)破産手続き中は、郵便物の内容をチェックされる。
それぞれデメリットの内容について、詳細を説明していきます。
生活必需品以外の価値ある財産は没収される
自己破産を行うと、住宅や土地、資産価値の高い車、高級ブランド品などは没収されてしまいます。
申立人が所有する生活必需品を除いた高額な財産は、借金返済に充てるために換金されて全ての債権者に分配されます。
当然のことながら、自分名義のマイホームも手放さざるを得ません。
ただし、自由財産と言われる自己破産をした場合でも手元に残すことができる財産があります。
自由財産には、次の物があります。
- 20万円以下の預貯金や物品
- 99万円以下の現金(破産法34条3項1号)
- 差押え禁止財産(破産法34条3項2号)
- 破産開始決定の後に取得した財産(破産法34条1項)
各項目について補足説明をしていきます。
20万円以下の預貯金や物品
資産価値の低い、年式の古い車などは残すことができます。
99万円以下の現金
当面の生活費として、99万円までは現金の保有が認められています。
差押え禁止財産
家財道具などの生活必需品や仕事道具は残しておくことができます。
破産開始決定の後に取得した財産
破産開始決定の後に取得した財産は、新得財産と言われます。
破産開始決定の後に取得した給料などの新得財産は、没収されることはありません。
なお、上記の自由財産に該当するものでも、ローン返済中の物はローン会社に回収される可能性があります。
10年間ほど、金融機関から借り入れができない
自己破産だけではないのですが、原則として任意整理や個人再生、特定調停といった債務整理を行うと、金融事故情報が信用情報機関に記録されます。
いわゆる、金融機関のブラックリストに載った状態となります。
信用情報機関とは、銀行や消費者金融、クレジットカード会社などが新規顧客に融資を行う際に、その新規顧客の借入情報を調べるために利用される機関のことです。
金銭の借り入れを希望している方が貸金業者に借入の申込みをした場合、貸金業者は融資審査を行いますが、その時に借入希望者のデータを信用情報機関に照会します。
信用情報機関に金融事故という情報が記録されていた場合には、借入希望者は融資審査で落とされることになります。
自己破産を行った場合は、自己破産の手続きを行った時に信用情報機関に金融事故の情報が記録され、その後に10年程度経った時点で金融事故の情報は消去されます。
つまり、自己破産を行ってから信用情報機関に金融事故情報が保持されている約10年間は、金融機関から借り入れをすることができないということです。
クレジットカードは利用できないですし、商品を購入した場合に月賦払いもできないので、携帯電話の分割払いなども利用できません。
また、自動車ローンや住宅ローンも申し込みをしても融資審査で落とされることになります。
返済が免除されない借金がある
自己破産をすると、全ての借金が無くなるとイメージしている人が多いと思います。
ですが、実は一部の未納借金は非免責債権と言われて、たとえ自己破産をしたとしても、その借金が免除されることはありません。
具体的には、未払いの税金や健康保険料などの社会保険料、養育費(離婚や別居をして養育費を払っていた場合)、法律違反による罰金、損害賠償の支払いなどは、自己破産をしても借金は免除されません。
借金の理由によっては、借金が免除されない
自己破産は、借金の理由が破産法252条1項各号に規定されている免責不許可事由に該当する場合は、原則として借金の免除が認められません。
免責不許可事由の内容は、次の通りです。
- 債権者を害する目的で財産を隠した(1号)
- 破産手続の開始を遅らせる目的で、不当な高利で借金をした(2号)
- 偏った不公平な返済を行った(3号)
- 浪費や賭博、その他の射幸行為によって借金をした(4号)
- 返済できないことを知りつつ欺いて借金をした(5号)
- 業務や財産に関する帳簿を隠したり、偽造・変造をした(6号)
- 虚偽の債権者名簿を提出した(7号)
- 裁判所への説明を拒否したり、虚偽の説明をした(8号)
- 不正な手段で管財業務の妨害を行った(9号)
- 過去7年以内に免責許可の決定が確定している(10号)
- 申立者に科せられている破産法上の義務に違反した(11号)
分かり辛い内容について、補足説明をしていきます。
破産手続の開始を遅らせる目的で、不当な高利で借金をした(2号)
不当な高利で借金をしたとは、闇金などの違法な貸付金利で融資を行う貸金業者からお金を借りた場合の事です。
また、クレジットカードで買い物をして、購入品を安値で換金するクレジットカードの現金化も免責不許可事由になります。
偏った不公平な返済を行った(3号)
特定の債権者に特別の利益を与える目的、または他の債権者を害を与える目的で、一部の債権者に有利な返済をした場合の事です。
例えば、他の債権者には返済しないで、知人や家族に優先的に返済を行った場合が該当します。
浪費や賭博、その他の射幸行為によって借金をした(4号)
身の丈に合わない高級ブラント品や高級車の購入、パチンコやパチスロ、競馬、FX取引、仮想通貨取引、株式取引などで借金をした場合が該当します。
返済できないことを知りつつ欺いて借金をした(5号)
破産申立ての1年前から破産手続き開始の決定の日までに、返済能力が無いのを自覚しながら欺いて借金をした場合です。
過去7年以内に免責許可の決定が確定している(10号)
既に説明をしましたが、過去7年以内に「自己破産の免責」や「給与所得者再生の再生計画認可決定の遂行」「ハードシップ免責の許可決定の確定」があった場合は、自己破産を利用することができません。
申立者に科せられている破産法上の義務に違反した(11号)
自己破産の申立者が、裁判所が行う破産手続きに協力をしなかった場合が該当します。
なお、上述した免責不許可事由に該当した場合でも、裁判官の裁量によって免責(借金の免除)が認められる裁量免責が行われることがあります。
特に浪費や賭博行為で多額の借金を作ってしまった方は、自己破産をするのが初めてであれば、裁判官の裁量免責によって借金を帳消しにして貰える可能性が高いです。
保証人(連帯保証人)が取立てを受ける
自己破産をすると申立てをした人の借金は、裁判所で免責許可の決定を受けることで無くなります。
ですが、仮に申立てをした人の借金に保証人や連帯保証人を付けていた場合には、保証人や連帯保証人の借金は免除されないため、保証人や連帯保証人が債権者から取立てを受けることになります。
自己破産は、保証人や連帯保証人を付けていた借金だけを破産手続きから除外するという事ができません。
そのため、もし保証人や連帯保証人を付けていた借金があるのなら、自己破産をする前に保証人(連帯保証人)の方と十分に話をして、納得を得ておく必要があります。
破産手続き中に就けない職業がある
自己破産をすると、破産手続き中は資格制限によって就けない仕事があります。
就けない仕事の具体例は、次の仕事です。
- 弁護士や税理士、公認会計士、行政書士などの士業
- 警備員
- 保険外交員
- 宅地建物取引主任者
- 建設業
- 質屋
- 旅行業者
また、私法上の制限として、判断能力が乏しいと考えられる者をサポートする後見人や保佐人、補助人にも自己破産中はなることができません。
官報に住所・氏名が掲載される
官報とは国が発行する日刊紙のようなものです。
自己破産をすると、この官報にその事実が住所と氏名と共に掲載されます。
インターネットを使えば、官報は発行から半年間、誰でも無料で閲覧をすることができます。
また、半年過ぎても有料になりますが、インターネットで官報を閲覧することができます。
官報に掲載されると「近所の人や職場の人、会社」などにバレてしまうと心配する方もいると思います。
ですが、心配は要りません。
法人を含めて一般の人が、官報を毎日チェックすることはまずないので、あなたが自己破産をしたとしてもバレる可能性はまずありません。
免責が不許可となった場合は破産者名簿に記載される
自己破産の申立てをしたが、免責不許可事由に該当した為に免責が認められなかった場合には、本籍地のある市町村役場の破産者名簿に記載されることになります。
借金の免責が認められなかった場合には、市町村役場の破産者名簿に記載されますが、破産者名簿は一般には非公開となっているので、破産者名簿によって自己破産したことがバレることはありません。
ただし、本人が役場で身分証明書を発行して貰った場合には、身分証明書内に破産者という記載があります。
そのため、就職の際などに勤める予定の会社へ身分証明書の提出が必要となった場合、身分証明書を提出することでその会社にバレることになります。
事業経営者の場合は、信用を失い今後の取引に悪影響がでる
自己破産をした人が自営業者や個人事業主の場合は、取引先の信用を失い、今後の取引が縮小したり取引が停止になるなどの悪影響がでる可能性があります。
ですから、事業の継続を望んでいる方は、自己破産をすべきか否かを慎重に考える必要があります。
(管財事件の場合)破産手続き中は引越しができない
原則として、破産手続き中は引越しをすることができません。
ですが、裁判所の許可を得れば住所の移転が可能となります。
(管財事件の場合)破産手続き中は、郵便物の内容をチェックされる
破産手続き中は、申立人の通信の秘密(憲法21条2項)は制約を受けることになります。
申告漏れの財産の発見、申立人による財産の隠匿や散逸の監視のため、申立人あての郵便物は破産管財人に転送されて内容のチェックが行われます。
なお、宅配便は破産管財人に転送されることなく、申立人が直に受け取ることができます。
具体的な自己破産による解決事例
ここでは、自己破産で借金問題を解決した3人の方の事例を紹介しています。
どの方も、自己破産をすることで借金地獄から脱出することに成功をしています。
事例1
自己破産前の負債総額 | 1250万円 |
自己破産前の負債総額 | 0円 |
職業 | 自営業者 |
年齢・性別 | 46歳(男性) |
借金の原因 | 生活費や事業資金の不足を補うため |
借入先の数 | 9社 |
借金期間 | 13年 |
コメント | 借金が全て帳消しになったことで、肩の荷が下りました。現在は生活保護を受けつつ自立を目指しています。 |
事例2
自己破産前の負債総額 | 350万円 |
自己破産前の負債総額 | 0円 |
職業 | 会社員 |
年齢・性別 | 32歳(男性) |
借金の原因 | パチンコにハマってしまった為 |
借入先の数 | 5社 |
借金期間 | 8年 |
コメント | 免責不許可事由に該当していましたが、免責審尋で正直に借金を作った理由を説明した結果、運よく裁判官による裁量免責を受けることができました。 |
事例3
自己破産前の負債総額 | 180万円 |
自己破産前の負債総額 | 0円 |
職業 | 退職をしたので無職 |
年齢・性別 | 33歳(女性) |
借金の原因 | 病気が原因で退職をしてしまい治療費と生活費のため |
借入先の数 | 5社 |
借金期間 | 3年 |
コメント | 借金がなくなったので、精神的にすごく楽になることができ、自己破産前より元気になることができました。 |
自己破産手続きの手順
ここでは、自己破産の手続きの流れについて説明をしています。
自己破産の手続きは、時系列で並べると次の様になります。
上記の各工程で、分かりづらい内容について補足説明をしていきます。
(1)弁護士に借金相談
借金問題を抱えている場合、一人だけで思い悩む方が多いです。
ですが、一人だけで悩んでも借金問題を解決するのは難しく、時間経過により借金が膨らむ結果となってしまいます。
そのため、借金返済で困っているのなら、債務整理に取り組んでいる弁護士と早期に借金相談をするべきです。
弁護士との借金相談は、初めての場合は30分間無料としている法律事務所が多くあります。
事前に資料を用意して相談に臨めば、30分あれば十分に解決方法の提案を受けることができます。
ですから、借金に関する資料を用意した上で、無料相談を行っている法律事務所を利用すると良いでしょう。
時間に余裕のある方は、複数の法律事務所を利用して、複数名の弁護士から解決のアドバイスを得る様にしましょう。
(3)提案内容に納得出来たら、自己破産手続きを弁護士に依頼
同時廃止の場合は、弁護士に依頼をせずに、申立人本人だけで自己破産手続きを進めることは可能です。
ですから確実に同時廃止として扱われる自信があり、手間がかかっても良いから費用を極力抑えたいという方は、自分だけで破産申立てをしても良いと思います。
ですが、管財事件の場合は、書類を揃えたり作成したりするのは難しい面があって手続きも複雑になるので、必ず弁護士に破産手続きの依頼をして弁護士に代理人になってもらう必要があります。
(4)弁護士から各債権者に受任通知を発送
弁護士は、自己破産手続きの仕事を受けた後、すぐに各債権者に受任通知(介入通知ともいう)を送ります。
受任通知を受け取った債権者は、取立て行為の規制(貸金業法21条1項各号)により、債務者に対して取り立てができなくなります。
また、借金の調整手続きに取り掛かることになるので、債務者は債権者へ毎月行っていた返済を停止することもできます。
(5)弁護士は各債権者に取引開示請求
弁護士は、貸金業者の債権額(貸付額)を調べるために、取引履歴を入手して債権調査を行います。
(6)引き直し計算で借金総額を確定
利息制限法の法定上限金利を超えたグレーゾーン金利で債権者が融資を行っていた場合には、債務者(依頼人)は債権者に対して払い過ぎた利息金(過払金といいます)があります。
引き直し計算では、過払金がある場合に、借入元本から過払金を差し引いて正しい借金額を導き出します。
(7)依頼人は弁護士に自己破産申立てに必要な書類を渡す
依頼人は弁護士に、収入や財産、返済能力に関する資料を渡します。
(8)弁護士は自己破産申立書を作成
弁護士は、債権調査の結果や依頼者から入手した資料を基に、裁判所に提出するための自己破産申立書を作成します。
(9)管轄の地方裁判所に破産申立て
弁護士は、依頼人の居住地を管轄している地方裁判所に破産申立てを行います。
(10)裁判所で面談
破産申立ての受付後にすぐに、即日面談が行われます。
裁判官は代理人である弁護士と面接をして、支払い不能になった状況や借金をした目的などについて質問をします。
ここで、借金を作った理由がギャンブルなどの免責不許可事由(破産法252条1項各号)だと自己破産は認められないことがあります。
(※免責不許可事由に該当する場合でも、裁判官が裁量で免責を認めることもあります[裁量免責]。)
裁判所は面談を行った結果、破産に値するかどうかを判断します。
(11)破産手続き開始決定
裁判所が破産に値すると判断した場合は、破産申立てと即日面接を行ったその日の内に、破産手続開始が決定されます。
また、裁判所によって破産申立てを受けた事件が同時廃止事件に該当すると判断された場合には、その日の内に同時廃止が決定します。
(12)[同時廃止の場合]免責審尋
申立人と弁護士は裁判所に出向いて、裁判官から審尋を受けます。
審尋と言っても、形式的な内容で難しくありません。
裁判官から免責決定の説明、免責許可となった際の留意事項が告げられ、裁判官から本籍地や住所、氏名などに変更がないかを聞かれるだけです。
(13)[破産管財事件の場合]破産管財人を選定
申立人の財産を管理する為の、破産管財人が裁判所で選定されます。
(14)[破産管財事件の場合]管財人面接
破産申立てから1~2週間後に、弁護士と申立人は管財人の所へ出向いて、管財人との面接を行います。
管財人によって審尋が行われて、次の様な内容を尋ねられます。
- 借金の内訳や借入理由、借り入れ時期
- 家計の収支・財産の状況
- 借金理由によっては免責の問題点に関すること
(15)[破産管財事件の場合]債権者集会
破産申立てから3~4カ月後に、債権者集会が行われます。
この時に弁護士と申立人は裁判所へ出向くことになります。
債権者集会では、破産管財人が「申立人の家計収支と財産の報告」と「免責についての意見申述」を行います。
免責許可に異議のある債権者がいなければ、債務者(申立人)に処分すべき財産がある場合は、債権者へ分配されます。
なお、債権者が金融機関の場合は、債権者集会に出席しないことが多いです。
ですから、申立人が金融機関からしか借り入れをしていない場合は、債権者集会はスムーズに終了します。
(16)免責許可の決定
裁判所による免責許可の決定は、免責審尋[同時廃止の場合]または債権者集会[破産管財事件の場合]から約1週間後に行われます。
(17)官報へ公告
申立人が自己破産したことが官報で公開されます。
(18)免責許可の決定の確定
免責許可の決定から1か月後に、免責許可の決定が確定をすることで、晴れて法的に申立人の借金はゼロになります。
自己破産の費用
自己破産をするには、費用が掛かります。
「借金返済で困っているのに、自己破産の費用なんて捻出できないよ」とほとんどの方が思うでしょう。
費用が手元になくても、分割払いにしてもらうなど何とかなるものなので、費用のことで躊躇せずに弁護士に借金相談をする様にしましょう。
ここでは、自己破産をする場合に掛かる弁護士費用と裁判所費用について案内をしています。
なお、当然のことですが、自己破産手続き(同時廃止)を弁護士に依頼せずに自力で行った場合は、弁護士費用は発生しません。
費用 | 費用の内訳 | 料金 |
---|---|---|
弁護士費用 | 相談料 | 初回30分は無料の場合が多い |
着手金 | 20万円~50万円程度 | |
報酬金 | 0~30万円程度 | |
裁判所費用 | 郵便切手代 | 3千円~1万5千円程度(債権者数で変動) |
収入印紙代 | 1500円程度 | |
予納金 | 同時廃止:1万円~3万円程度 | |
少額管財事件(※1):20万円程度 | ||
管財事件:50万円程度 | ||
官報掲載費用 | 1万円~2万円程度 |
(※1):少額管財事件は、裁判所費用を抑えるために各裁判所の判断で運用されている手続きで、法律に基づく制度ではないため実施していない裁判所もあります。
弁護士ではなく司法書士に依頼するという選択肢
自己破産の手続きは、法律の専門家に依頼する場合は弁護士以外に司法書士に依頼するという方法もあります。
司法書士に依頼するメリットは、弁護士より着手金・報酬金が安く済むという事です。
ですが、司法書士に依頼した場合にはデメリットもあります。
そのデメリットとは、弁護士は地方裁判所で法廷代理人になれるが、司法書士はなれないという事です。
このため、司法書士に自己破産の手続きを依頼した場合は、裁判官や破産管財人との面談は申立者本人が受け答えをする必要があります。
自己破産を依頼する法律事務所・司法書士事務所の選び方
自己破産をする時に、弁護士若しくは司法書士に手続きを依頼する場合には、次のポイントを押さえて、依頼先を決める様にしましょう。
- 説明が丁寧で分かり易い。
- 相性が良い。
- 費用自体や費用の支払い方法が明確である。
- 事務員任せにしない。
- 複数の事務所で無料相談を受ける。
それぞれのポイントについて解説をしていきます。
説明が丁寧で分かり易い
問題解決策などのアドバイスをする際に、理解できるまで何度も繰り返して丁寧に説明をしてくれる弁護士(司法書士)を選びましょう。
コミュニケーション能力の低い方に依頼をしてしまうと、意思疎通が図れず苦労することになります。
相性が良い
相手を信頼できるかも含めて、相性の良い方に仕事を依頼しましょう。
自己破産を依頼した場合には、最低でも3カ月間は弁護士(司法書士)とやり取りをすることになるので、相性が良い方を選ぶ必要があります。
費用自体や費用の支払い方法が明確である
掛かる費用や費用の支払い方法が不明確だと、費用面で不安を抱えたまま、自己破産手続きを依頼することになります。
費用の金額やその支払方法は重要事項なので、明確に提示してくれるところを選びましょう。
費用の支払方法としては、分割払いや後払い、そして法テラスの民事法律扶助制度を利用できるかを確認すると良いです。
法テラスの民事法律扶助制度とは、弁護士費用(司法書士費用)の立て替え払い制度のことです。
民事法律扶助制度を利用することで、弁護士費用(司法書士費用)の支払いを自己破産手続き中は毎月5千円または1万円の支払いにでき、自己破産手続き後は3年以内に完済できる金額で月々の分割払いにすることができます。
事務員任せにしない
事務員が多くいる事務所では、最初の相談の時だけ弁護士(司法書士)が面談をして、それ以降は事務員任せにするという事務所もあります。
連絡のやり取りも事務員とすることになるので、手続き中にトラブルが発生した時に弁護士(司法書士)としっかりと意思疎通を図れないといったことが起こり得ます。
自己破産の手続きを依頼する場合は、担当の弁護士(司法書士)が依頼者と直接やり取りする事務所を選んだ方が良いでしょう。
複数の事務所で無料相談を受ける
時間に余裕がある方は、借金相談を複数の法律事務所(司法書士事務所)で受けてみることをお勧めします。
そうすることで、自分にピッタリとあった事務所を見つけることができます。
まとめ
自己破産は、ほとんどの財産を失うなどの大きなデメリットがありますが、デメリットをはるかに凌ぐ大きなメリットとして借金の返済免除を受けることができます。
借金問題に対しての究極ともいえる救済制度なので、経済的に破綻している方は迷うことなく自己破産の手続きを行いましょう。
借金問題は放置をすると借金が膨らむだけでなく、返済の重圧によって精神まで病んでしまうことがあります。
現在、手元に自己破産の為の費用が無い方でも、掛かる費用の事を考えずに、弁護士などが行っている借金の無料相談を受ける様にしましょう。
借金の無料相談を受ければ、自己破産などの手続きにより、おのずと道は開けてきます。