ギャンブルが原因で作った借金の返済は、一筋縄ではいきません。
なぜならギャンブル依存症になっている可能性が高いからです。
通常なら借金をしてまで賭け事をすべきではないことは分かりきっていることなのに、それが止められない人は依存症になっていると思っていいでしょう。
ギャンブル依存症とは
ギャンブル依存症とは、「パチンコやパチスロといった民間の遊技、競馬・競艇・競輪といった公営競技で金銭を賭ける事が原因で、日常生活に支障が起こっている状態のこと」を言います。
ここで言う「日常生活に支障」とは、ギャンブルの為に借金を負っている、学業や仕事などに差し障りが出ているといったことなどの事です。
また、ギャンブル依存症はれっきとした病気で精神性の疾患なので、ギャンブル依存症になっていると分かった場合には、診療科目に精神科のある病院で治療を受ける必要があります。
ギャンブル依存症の症状
ギャンブル依存症の症状には次の項目があります。
自分に当てはめてみて、同じ症状が出ていないかを確認してみましょう。
- 四六時中ギャンブルのことが頭から離れない。
- 生活や仕事に支障をきたすほどギャンブルにのめり込んでいる。
- ギャンブルから足を洗いたいのに、洗えない。
- ギャンブルをしたいという強い衝動に駆られる。
- 自己嫌悪やうつなどのネガティブな精神状態のために辛い日々を送っている。
- ギャンブルが原因で周囲の人からの信用を失っている。
ギャンブル依存症を治すのが先決
ギャンブル依存が治らなくては、借金返済をいくら頑張っても状況は変わることはありません。
なぜなら、依存症とは止めようと思っても自分の意思ではなかなか止められない症状だからです。
借金返済を捗らせるにはギャンブルを止めるのが先決と頭では理解していても、止められないのが依存です。
まずはその依存症を治さなくてはいけないのです。
ギャンブル依存症の判定方法
ギャンブルにハマっている方は、自分が本当にギャンブル依存症になっているかを知りたいですよね。
アメリカ精神医学会が作成した、DSM5というギャンブル依存症の判定方法があるので、ここで紹介をします。
次の各項目に当てはまるか「はい」、「いいえ」で答えていってください。
- ギャンブルが原因で借金を積み重ねている。
- ギャンブルをしないとイライラしたり、落ち着かなくなる。
- ギャンブルで高揚感や興奮を得たいが為に掛け金を増やす。
- 常にギャンブルの事を考えている。
- ギャンブルを止める努力を繰り返し行っているが失敗した。
- 負けを取り戻そうとギャンブルを繰り返す。
- 不安や無気力、うつ状態といった精神的に負の感情の時にギャンブルをしがちだ。
- ギャンブルが原因で人間関係が悪化、又は教育や仕事で機会を逸したり失敗をした。
- ギャンブルにハマっていることを隠すために嘘をつく。
もし、過去1年の行動で4つ以上の項目で「はい」となった場合には、残念ですがギャンブル依存症になっていると判断できます。
ギャンブル依存症と判断された場合には、早急に医療機関で治療を受けることをお勧めします。
ギャンブル依存症の治療と対策
ギャンブル依存症を治すには、まず自分で依存症であることを認めなくてはなりません。
自分で認めることができれば、次は家族や親しい友人と共有することが大切です。
ここでは、ギャンブル依存症を治療するための対策方法について説明をします。
信念を持ってギャンブルを絶つ
「ギャンブルを絶つ」と宣言して、ギャンブル系雑誌など思い出すようなものは全て廃棄しましょう。
「ちょっと少しだけ、様子を見るだけ」と言ってギャンブルに近づく行動は絶対にいけません。
病院で治療を受ける
ギャンブル依存の症状が重度の場合は、ギャンブル依存症という精神疾患の一種になっているので、本人の意思や家族の協力だけではどうにもならないことがあります。
ギャンブル依存症の場合は病院で専門医にかかり、治療が必要になります。
ギャンブル依存症の自助グループに参加
ギャンブル依存症の自助グループとは、同じ悩みを抱えている方々が相互に助け合い、依存症に関して情報交換をする組織です。
有名なギャンブル依存症の自助グループには、依存症になっている本人を対象とした「GA日本インフォメーションセンター」と家族に依存症の人がいる方を対象とした「一般社団法人ギャマノン日本サービスオフィス」があります。
悩みを共有できるので、ギャンブル依存症に関する困り事の相談ができます。
ギャンブル依存症の支援団体に参加
ギャンブル依存症の支援団体とは、ギャンブル依存症となっている本人やその家族をサポートするための団体です。
有名なギャンブル依存症の支援団体には「公益社団法人 ギャンブル依存症問題を考える会」と「NPO法人 全国ギャンブル依存症家族の会」があります。
ギャンブル依存症の再発防止を考える
ギャンブル依存症となっていた方が、家族の支えもあり、病院での治療や自助グループの助けなどにより無事に依存症を解決できた場合には、次のステップとして再発防止を考える必要があります。
ここでは、心を惑わす辛いギャンブル依存症に再度かからない様にするための再発防止のアドバイスを行っています。
ギャンブルから距離を置く
まず、ギャンブルから距離を置くようにする必要があります。
通っていたパチンコ屋や競馬場などのそばには近づかない。
ギャンブル関係の雑誌や書籍は全て捨てる。
パチンコのテレビCMを見ない様にする為に、テレビは極力見ない。
この様なことを行って、ギャンブルの事を考えない環境を作る様にしましょう。
財布にはあまりお金を入れておかない
財布にお札が沢山入っていると、財布の中身を見るとギャンブルをしていた時のことを思い出してしますかもしれません。
また、衝動的にギャンブルがしたいと思ってしまう可能性もあります。
その様なことを避けるために、財布には常に数千円程度だけを入れる様にして、必要以上に大金を持ち歩かない様にしましょう。
新たな趣味を見つける
時間を持て余すと、ついついギャンブルの事を考えてしまいがちになります。
頭の中からギャンブルを追い出すために、新たな趣味を見つけると良いです。
例えば、適度な運動のスポーツを趣味にして汗を流すと、気分がリフレッシュされてメンタル面にも良い影響を与えます。
定期的に自助グループに参加
さらに、ギャンブル依存症の治療中に自助グループに参加をしていた方は、依存症が完治した後も定期的に自助グループに参加をする様にしましょう。
既に症状は完治しているので、依存症で困っている方にアドバイスができるし、依存症の辛さを再確認することができます。
ギャンブル依存症の再発防止まとめ
- ギャンブルのことを思い出さない様にする
- 財布には、必要最低限のお金だけを入れる
- 運動などの趣味を作る
- 自助グループなどに継続的に参加(治療中に自助グループなど利用していた場合)
絶対に借金を増やさない
ギャンブル依存症の治療と並行して、絶対に借金を増やさない生活を送るようにすることが大切です。
簡単にお金を借りられるカード類はすべて廃棄し、借金返済は後回しにできないように給与振込口座から自動引落する様にすると良いです。
お金の管理はすべて家族にやってもらうのもいいでしょう。
ギャンブル原因の借金を作った人は決して物事を軽視せず、これ以上借金を増やさないための対策を早期に取ることが大切なのです。
借金問題を解決できない場合は債務整理
債務整理とは、法的な手段などを用いて借金問題を解決することを言います。
法律に疎い素人が的確に債務整理を行うのは難しいので、一般的に債務整理手続きは借金問題を扱っている弁護士または司法書士に依頼をすることになります。
債務整理の方法には、過払い金返還請求、任意整理、自己破産、特定調停、個人再生があります。
ここでは、各々の債務整理方法の特長を紹介します。
過払い金返還請求
貸付金利の上限は利息制限法という法律で決められています。
また、かつては出資法にも上限金利が記載されていました。
利息制限法より出資法の上限金利の方が高利率で、数年前まで金融機関は利息制限法の上限金利を超えて、かつ出資法の上限金利以下の貸付金利、いわゆるグレーゾーン金利で貸し付けを行っていました。
グレーゾーン金利での貸し付けは違法との判断が裁判所でされた為に、グレーゾーン金利で債権者に返済を行っていた債務者には債権者に多く払い過ぎたお金が発生しました。
この払い過ぎたお金を債権者から取り戻す手続きが過払い金返還請求です。
過払い金返還請求は、一般的には債権者と直に交渉を行いますが、債権者が返金に応じない場合には裁判所で訴訟を起こして法的な手続きで返金を求めることもあります。
任意整理
裁判所を使わずに借入先の債権者と直接、月々の返済負担の軽減交渉を行います。
適正な利率で利息金の再計算を行う引き直し計算を行って、払い過ぎた利息金と借入元本の相殺を行います。
また、返済負担を軽くする為に、今後の貸付金利のゼロや完済までの期間の長期化などを求めます。
自己破産
どうしても返済が難しい場合に、最終的な手段として行われる方法です。
地方裁判所に破産申立てを自ら行い、裁判所から免責許可の決定を受けることで、税金や社会保険料などの一部の例外を除いて借金は全額免除となります。
なお、ギャンブルが原因の借金は免責不許可事由に該当してしまい、借金の免除がされない可能性もあります。
ですが、裁量免責というものがあり、自己破産に至るまでの事情を考慮した場合、免責することが妥当と判断された場合には、借金の原因がギャンブルであったとしても、裁判所から免責許可の決定を受けて、借金の免除を認めて貰うことができます。
特定調停
簡易裁判所で行う手続きで、調停委員が金銭の貸主である債権者と借主である債務者の和解の仲裁を行います。
話しが上手くまとまった場合には、その合意内容を基に調書が作成されます。
調書に記載されている内容には、裁判の確定判決と同等な法的な強制力があります。
個人再生
地方裁判所に借金を大幅に圧縮した3年で完済できる返済計画案を提出して、その計画を認めて貰う方法です。
家や土地などを手放すことなく、住宅ローンを除いた借金を最大で1/5にまで大幅に減らすことができます。
メリットの大きい個人再生ですが、利用には条件があり、「安定した継続的な収入があること」、「住宅ローンを除外した負債総額が5千万円以下である事」を満たしている必要があります。
上述したように債務整理方法には様々ありますが、どの債務整理方法を選ぶかは依頼者の借金総額と家計の収支、資産状況、担当弁護士(司法書士)との相談によって総合的に判断を行います。
なお、債務整理ができたとしてもギャンブル依存症の治療をせずに放置してしまうと、根本的な原因の解決ができていないので意味がありません。
債務整理をすると、その情報が個人信用情報機関に記録され、いわゆる金融機関のブラックリストに載った状態になります。
そのため、債務整理を実施してから5~10年間ほどの間は行政に登録している正規の金融機関では新たな借金はできなくなります。
ですが、闇金などの違法な貸金業者は、ブラックリスト入りしていてもお構いなく貸し付けることができます。
ギャンブル依存症だと後先考えずに闇金に手を出す可能性が高くなります。
ですから、借金問題を解決するための債務整理とギャンブル依存症の治療は同時進行で行う必要があります。